手掌多汗症とは
手掌多汗症とは、手のひらに異常に多量の汗をかく症状のことをいいます。
正確な原因はまだ解明されていませんが、コリン作動性交感神経の活性化や精神的緊張が関連していると考えられています。ご家族内で同様の症状がある方が多い傾向ですが、遺伝的な原因はまだ解明されていません。
症状
- 左右対称性に発汗がみられます
- 季節や温度に関係なく発汗があります
- 物や紙が濡れて日常に支障をきたします
手掌多汗症の診断基準
- 最初に症状がでるのが25歳以下であること
- 対称性に発汗がみられること
- 睡眠中は発汗が止まっていること
- 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
- 家族に同じ症状の方がいること
- 手汗のために日常生活に支障をきたすこと
※局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6ヶ月以上認められ、上記6項目症状のうち、2項目以上あてはまる場合
治療法
- 外用剤 [1]アポハイドローション [2]塩化アルミニウム
- 内服薬 [1]抗コリン薬(プロバンサイン) [2]漢方薬
- イオントフォレーシス
- ボトックス注射
- 手術(交感神経遮断手術ETS)

当院が行っている治療法
外用剤:アポハイドローション
1日1回、就寝前に両手手掌全体に塗布します。
汗の出口(エクリン汗腺)にあるムスカリン受容体に結合することで抗コリン作用により発汗が抑えられます。12歳以上適応となります。
●効果について
使用後4週間ほどで半数以上の方で発汗量が50%以上抑制されるとしています。
●副作用
塗布部位に皮膚炎・かゆみ、口の渇き、便秘、排尿困難など
●費用
1本(約1週間分) 【3割】約710円 【2割】約470円 【1割】約240円

内服薬:抗コリン薬(プロ・バンサイン)
1回1錠 1日3-4回経口投与可能です。。全身に作用します。
服用後1時間ほどで効果がでてきます。約5時間持続します。
15歳以上適応となります。
●副作用
目の調節障害、眠気、口の渇き、排尿困難など
●費用
1日4回30日分 3割 約250円 2割 約170円 1割 約80円

イオントフォレーシス
微弱な電流を通電することで発生する水素イオンが汗孔部を障害することで発汗を抑制します。
方法:水道水の入った容器の中に手のひらを浸し、微弱な電流を流します。
1回約15分で、左右合わせて30分ほどかかります。
●通院
1週間に1回ほど施行します。
●効果
5回前後で汗の量が減少するか判断します。効果がみられるようなら10回ほど継続することで効果が持続するといわれています。
その後は2か月に1回ほど施行することが推奨されています。
●副作用
電流によるピリピリとした感覚。まれに発赤や水疱 (電気熱傷)。
●治療を受けることができない方
心臓に障害がある方、妊娠中の方、重度の喘息、重度の食物アレルギー、枯草熱、手に傷がある方、手に金属が入っている方、マニキュアなどをしている方
●費用
保険適用で1回 1割負担:220円、 2割負担:440円、 3割負担:660円となります。

原因
糖尿病や加齢に伴い出現 原因不明
手のひらにある手掌腱膜が肥厚化し(しこりやこぶ状のようなものができる)拘縮することで指を伸ばすことが困難になる病気です。疼痛はなくまず手のひらの屈筋腱に沿って腫瘤が出現し徐々に皮膚がひきつれを生じていきます。
治療
症状が進行し日常生活に支障をきたす場合には手術を行います。観血的に硬くなった腱膜を切除します。最近は侵襲が少ない経皮的に拘縮した腱膜を切離術を行ったりしています。手術後は装具やリハビリテーションを行います。
原因
親指の付け根にあるのが母指CM関節です。母指を使いすぎたり、加齢により軟骨がすり減ると関節が変形します。日常において蓋(ペットボトル等)を開ける・物をつかむ動作で疼痛が出現するようになります。
治療
保存療法は装具療法、内服・外用など。改善なければCM関節内注射(ステロイド等)を行います。保存治療では改善が乏しいものは手術療法(CM関節形成術、CM関節固定術)を行ったりします。
肘の内側にある肘部管の中に尺骨神経が通っており圧迫されることで薬指や小指にしびれが出現します。さらに悪化進行すると筋力低下が起こり小指や薬指を伸ばしにくくなったりして機能障害が出現します。
原因
加齢や骨折による変形、ガングリオンなどの腫瘤による圧迫、スポーツによる肘の酷使、神経脱臼による刺激症状など
治療
保存療法としては患部安静、内服(鎮痛剤やビタミンB12など)をまず行います。症状改善なく筋力低下が進行した際は手術加療を単純除圧術や尺骨神経前方移行術(尺骨神経を前方に移動し神経の緊張を取り除く)などが行われます。
症状
手根管とは手のひらにある骨と靭帯で囲まれたトンネルで、この中に指を曲げる腱と正中神経が通っています。手根管症候群はこのトンネル内で腱の周りが腫れたり様々な原因で正中神経が圧迫を受け、母指〜薬指のしびれや疼痛そして親指を動かす筋肉が麻痺し手の使いにくさを起こす疾患です。症状が悪化すると夜間に痛みをともなうしびれのため睡眠が妨げられます。
原因
特発性(原因不明 ほとんどのものです)
続発性 透析・屈筋腱の炎症・ガングリオン・骨折後 等
評価・治療
40歳以降の女性に多く女性ホルモンの減少が関与していると言われています。
検査では神経伝導速度を測ります。速度が低下していれば手根管症候群の診断がつきます。病気の進行程度が客観的に評価できます。
治療は初期軽度のものは装具、リハビリテーション、内服治療を行います。中等度のものはステロイド注射を行います。それでも改善しない場合長く放置しておくと親指の付け根の筋肉が痩せてきて回復が困難になることがあるため、手術を推奨いたします。
手術(手根管開放)は正中神経を覆っている横手根管靭帯を切開し神経への圧迫状態(手根管内圧を低下)を取り除き神経の回復を期待します。